富士宮

中小企業大学第一講:今なぜ正義について語ることが求められているのか?

日時  平成23年9月27日(火)

講師  静岡大学理事・副学長 石井潔氏

講義  「今なぜ正義について語ることが求められているのか」

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7時より開講式、学長である須藤秀忠富士宮市長、事務局の中小企業家同友会富士宮支部長・簑威頼の挨拶で開講した。

今、哲学を通して「正義について語ること」がNHKの仕掛けでブームになっている。背景には、経済的問題(リーマンショック、ギリシャ経済危機等)、政治的問題(EU統合、アラブの春、エネルギー問題等)、軍事的問題(イラク・アフガン戦争、人道的介入等)、いずれもが即座に国際的に影響するケースが多くなり、「何が正義か」を国や共同体の枠を超えて議論する必要が生じた。

石井先生は今回、マイケル・サンデルとアマルティア・センの正義論について類似点・相違点を含めて講義してくださった。

サンデルの議論の基本的構造は「功利主義」(最大多数の最大幸福)と「基本的権利」(少数で殺された者の権利)の間のジレンマを提示し、「美徳」(中庸の正義)の立場に立った解決を目指す。誰もが納得する「解決」は得られにくいが、同じ論理的構造をもつ問題については、具体的ケースに即して具体的条件を積み上げながら議論していくことによって「解決」は近づく。

サンデルの講義の特徴は、対話形式の授業(自ら議論に参加し、自分の頭で正義について考えている実感)と具体的・道徳的ジレンマ事例の分かりやすさと印象の強さ(難破したボートで1人を殺して食べることによって、他の3人が生き残ることは正当か、あるいはそれは殺される1人の基本的人権を侵すことになるか?)にある。

センの「正義についての提案」は、絶対的正義の制度保障(超越論的制度主義)を目指すのか、あるいは社会の中に現実に存在する明らかな不正義を減らす(比較論的アプローチ)ことを目指すのか。単一の正義の原理に基づく制度に支えられた「完全に正しい社会」を提示することはできない。

故に相対的に、より不正義の少ない社会を目指す「比較論的アプローチ」をとるしかない。社会的正義の判断は、意思決定の過程で、多様な情報と理性的議論に立脚する社会選択論である。今回の講義で感じたことは、絶対的な正義の概念によって物事、社会の在り方が形成されるのでなく、十分な情報と理性に基づく議論により、よりましな選択をすることにより社会が形成されていくことを学んだ。それが正義の本質なのかもしれない。

 

報告:河原崎信幸(シンコーラミ工業株式会社 会長)

写真:草ヶ谷力(草ヶ谷燃料 社長)


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