富士宮市中小企業大学09 第五講報告 「犯罪と異常心理」
平成21年度 富士宮市中小企業大学 第五講
■開講日 10月27日
「犯罪と異常心理」 犯罪心理学は成立しうるのか
講師 静岡大学 人文学部教授 磯田雄次郎氏
はじめに先生は、弁護士側での立場で精神鑑定を行うことが多いので、「私の話はバイアスがかかっているかも知れない」とことわった上で講義を始めた。
犯罪とは社会的事象である、近年凶悪犯罪が増えているイメージがあるが、犯罪白書を読んで見ると、凶悪犯罪は減少傾向にある、しかし検挙率が下がっていることが問題である。社会情勢を反映して経済的犯罪は増加傾向にある。特に詐欺事件(オレオレ詐欺)は複雑化し、大学生が容疑者となっていることも多い。覚せい剤等の薬物犯罪は若年者・大学生で増加傾向にある。
心理学とは「こころ」が存在することは疑いの余地はないが、直接的測定・観察は不可能なので、「こころ」の働きから生じる「行動」を測定することによって「こころ」の研究をする学問である。
1972年にエンゲル博士が「こころ」の機能からの行動を判断するには、生物的・心理的・社会的の「三つの視点」から判断しなくてはならない、と論じた。心理学には、正常心理学と異常心理学があるが、異常心理には病気・犯罪・非行・移民等の要因があり、異常心理イコール犯罪とは云えない。犯罪とは異常な行動ではあるが、社会的状況によっては異常・正常の概念は置き換えられてしまう。例えば、「一人を殺せば殺人であるが、戦争で多数を殺せば英雄となる」。いま犯罪という行動の定義は刑法に違反する行動と捉える。
では犯罪心理学の対象は、犯罪者・犯罪という事象・原因、そのどこにおくべきなのか、どれを対象においても「三つの視点」から判断しなければならない。犯罪心理学は科学的研究がなされているが、さらに研究を重ね、時期が熟したときにブレイクスルーし完成するであろう。
報告:シンコーラミ工業株式会社 代表取締役 河原崎信幸