富士宮市中小企業大学 第四講報告 ~市場経済と法文化 ~ 中国とロシアの場合~
開講日 10月28日
講師 静岡大学 法科大学院 大江泰一郎教授
題目 市場経済と法文化 ~ 中国とロシアの場合
「比較法」という聞きなれない学問の解説から講義が始まった。まず日本の司法改革が、「根回し社会」から「訴訟社会」へ向かっていることに疑問を投げかけ、「法は道徳の最小限」であることを考えると、日本に「訴訟社会」としての「法文化」が育つであろうか、そして「法文化」とは何か?
「法」の考え方に、日本・中国・ロシアのように、為政者が上から下へ命令として下す「行政型」と、ヨーロッパ・アメリカのように、民衆が法を下から作り、公権力をも制約する「裁判型」の二つのタイプがある。
行政型とは中国の律令(刑法+行政法)やソ連の行政的命令システム、江戸時代の「非理法権天」等、法の上に権力が存在したため、裁判は行政の一環にあり、独立した司法とは言えなかった。
裁判型とは「王は法の下にある」のごとく権力の上に法が存在した。「民衆の声は神の声である(天声人語)」の精神が「人権」と「国民主権」を生み出した。
法と市場経済の関係においては、法治国家においてこそ、健全な市場経済が生まれる。ロシア・中国の例をみてもわかるように、その国の持つ法文化によっては、体制を越えて法文化は続くため、独裁あるいは権威主義の下における市場経済となってしまう。
日本古来の伝統は、「お上」と呼ばれた行政の下に義理・人情の庶民生活があったが、戦後「日本国憲法」制定するにおいて、「訴訟社会」の構築を目指した。しかし長く「根回し社会」という法文化を築いてきた日本が、裁判型に転換することは出来るのだろうか。
<報告:シンコーラミ工業株式会社 代表取締役 河原崎信幸>