富士宮

富士宮市中小企業大学 第二講:腸管免疫とアレルギー

日時   平成23年10月4日(火)

講師   静岡大学農学部教授 森田達也氏

講義   腸管免疫とアレルギー

 私たちは生きる為に、年間100kgあまりの食物(水分を除く)を摂取するが、これは年間15kgの食事抗原(タンパク質、食物アレルギーの原因)に曝されている事を意味する。これら食事抗原の完全な遮断は不可能で、極少量の腸管透過は常に起きている。これらに対する過剰な免疫応答は、生体に炎症やアレルギーをもたらす。それ故、比較的安全と認識したものに対しては、寛容(腸管免疫寛容)を示している。最近、この寛容には、腸内細菌の種類が深くかかわっていることが明らかになってきている。つまり、食物アレルギーやアトピーの発症は、腸管(広義では粘膜)免疫間の破綻を意味しているのかもしれない。

免疫系には自然免疫(人が生まれつき備えている防御機構)と獲得免疫(人に侵入した病原体の抗体に働く防御機構)があるが、この二つのバランスが大事である。アレルギー症の発生が多くなった近年40年で、卵・乳製品・小麦等の消費が増えている。我々の食生活の変化は大きく関わっている。

アレルギー疾患の要因に「衛生仮説」がある。兄弟の多い子供はアレルギーを発生するリスクが低く、アレルギー疾患の増加は、幼少期における感染の機会が減少したことによる。寄生虫や結核の激減を境に、アレルギー疾患が激増している。そもそもIgE抗体は寄生虫を撃退する為に造られたのである。

近年「衛生仮説」から「腸内フローラ(細菌)仮説」へ移行している。細菌・ウイルス感染は必ずしもアレルギーを抑制せず、幼少期における腸内フローラのパターン変化により、免疫寛容の発達が不完全なときアレルギーを発症するのである。動物実験でも無菌動物では腸内免疫寛容は成立しにくい。人の腸には100兆個もの細菌が棲みついている。腸管は、栄養素を取り込み、病原性微生物を排除する、といった二律背反する働きを担っているのである。子供の腸管免疫は、母親の腸内フローラに大きく影響される。アレルギー対策であるが、生後早期、つまり免疫寛容の誘導時期にProbioticsやPrebioticsの投与がアトピーや食事アレルギーの発症抑制に有効である。

報告:河原崎信幸(シンコーラミ工業株式会社 会長)


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