富士宮

平成22年度 富士宮中小企業大学 第三講 レポート

平成22年度 富士宮中小企業大学 第三講

開講日   10月12日

講師     東京都市大学 環境情報学部教授 涌井雅之氏

講義     環境

「地域社会と生物多様性」

初めに先生は、「人間の果てしない欲望」が招いた地球環境の現実について語ってくださった。地下資源の払底が近く、「水の惑星」と言われた地球上には、人間が使える水は僅か0,01%しかないと。エコジカルフットプリント(人間の存在が地球にかける負荷)で表すと人類は地球に1,25個分の負荷をかけている。地球誕生からの歴史を1年に例えると、人間が誕生したのはクリスマス過ぎ、農業革命が始まったのは年末の午後11時59分、産業革命に至っては、1年の終わる2秒前という、僅か2秒で地球の資源が枯渇しようとしている。

地球上の生命は、大気圏20km・水圏10km、直径20cmの円に例えると僅か0,5㎜の線の中に生きている。これは一つの生命体と言えるのではないだろうか。「生命潮流」によって地球上の命は全て繋がっているのである。1992年、リオデジャネイロで地球環境サミットが開かれた。「生物多様性条約」は翌年(1993年)に、「気候変動枠条約」に先立って結ばれている。生物多様性とは地球上に住む3000万種類の生物のバランスを取ることにある。

現在1日に100種が絶滅している。一種類の生物の数は、ロジスティク曲線で生体数がコントロールされているが、人類は石油の使用から数が増え続け、絶滅曲線を辿っている。人間も絶滅の危機にさらされているのだ。人間は「生態系サービス」によって大きな恩恵を受けている。経済効果にすればGDPの二倍を大きく上回る。

今、アメリカやEUなどが、政治力で生物多様性のルールの指導権を握ろうとしている。しかし生物多様性は、地球市民的発想と実践的活動と連帯を以って、政治への訴求を行っていかなければ実現できない。多様な主体による「共」(つながり)の再生には、生物多様性がローカル・ガバネントの行動規範でなくてはならない。今を第三の革命、「環境革命」元年であると捉え、新たなライフスタイル(健康+生きがい×未来×環境)で自己実現の欲求を満たして行きたい。「Cop10」では、日本発「SATOYAMAイニシアチブ」を、生物多様性のルールと提案したい。

日本の美しさは、厳しい火と水と風による、不安定の中に生まれた。自然を読む力、そしてそれを「いなす術」。これをもって北から南まで、どんな環境にも循環可能な風土を作り上げてきた。日本人の持つ自然観、「振る舞いの心」「もてなしの心」「匠の心」、三つの心で、生物多様性のイニシアチブを日本が取って行くべきではないだろうか。

報告:河原崎信幸 (シンコーラミ工業株式会社 代表取締役)


  • 富士宮支部
  • 静岡県中小企業家同友会
  • jobway
  • DOYUNET
  • 同友会会員検索
  • 同友会活動支援システム

過去記事