富士宮

平成22年度 富士宮中小企業大学 第二講 レポート

平成22年度 富士宮中小企業大学 第二講

開講日  10月7日

講師    静岡大学情報学部教授 笹原恵氏

講義    「社会学」 ―現代の疎外論―

「人はなぜ崩れていくのか」

人が崩れた状態とは、犯罪(殺人)を犯す等、秩序に対する「逸脱行動」、うつ・自殺等「社会病理」の状態を指すのであろうが、たとえば戦争での殺人は肯定されるように、状況が違えば意味づけも異なる。故に犯罪は「行動」そのものではなく、社会規範(法・道徳・習慣)に反するかどうかで判断される。

人が崩れる原因として「アイデンティティの喪失」がある。「自分がほかならぬ自分である」そして他者も認めているという確信・感覚を周囲に否定されたとき、人は「根こそぎ感」にとらわれ、自分が何であるのか分からなくなる。そして人間関係が利害打算の関係と化し、社会の評価が競争・序列化・モノ化していくことにより「疎外感」を感じ、「かけがいのない自分」という人間性を喪失していくのである。

秋葉原事件をはじめとした無差別殺人は、社会から疎外された人間が他者を道連れにした、いわば自殺の延長線にあるのかもしれない。

社会学は19世紀半ばヨーロッパにおいて、「社会」とは何か、どのようにつくって行くか、という問いが市民革命から生まれた。一人の人間の生活を、社会的歴史的な世界の巨大な構造にまで拡大して捉えることが必要である。

一つの事件を社会学的に考察するとき、現代社会の実存構造から分析していくことが必要であろう。

先生は最後に「現代を如何に生きるか」というテーマに触れて、競争・序列による縦の社会の評価からの出口をどう作るのか、実存主義・成果ではなく過程(如何に生きるか)を問う、など現代のバーチャルの時代を生きていく術を、社会学的に語ってくださった。

報告:河原崎信幸 (シンコーラミ工業株式会社 代表取締役)


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