富士宮

しっかり伝える

 かつて親交をはかるも、多用で2年程無沙汰してしまった製造業の経営者の方と過日再会した。私が駆け出しの頃、諸々アドバイスを下さった、自分の父くらいの年齢の、厳しくも優しい恩師の一人だ。

 「君に以前『しっかり顔を出すこと』そして『しっかりと営業すること。』と言ったのを覚えてるかな」

 大変簡潔で奥深い助言を思い出しはっとした。

 顔も出さずに、営業ばかりになっては、「都合でしか来ない愚か者」。逆に営業をろくせず、なんとなく顔出しているだけは「己の使命・仕事の魅力を伝えぬ愚か者」と恩師は言いたかったのだろうと思う。

 かつて、松下幸之助氏も「良い物は、伝える義務がある」と、経済人としてのあるべきを説いていた。

 自分はどれだけ顔を出し、どれだけ己の仕事の魅力・価値を説いてきただろうか。

 なんとなく、「営業は申し訳ない」という先入観が邪魔しているのか、なかなか徹底しきれていないな、と振り返る点が多々あると思った。

 そこに「ただ居ること」と「伝わっていること」は違う。そういえば、出席率でも変わってくるが、この同友会でも、知り合って何ヶ月、何年にもなるのに、「なんだ、お互いに、何をやっているのか仕事の内容を知らなかったね」という会話も時々出てくる。

 ふと思ったが、「伝えない」という行為は、在る面から見れば、自分を守る行為なのかな、とも思った。恐れの裏返しかもしれない。
 なぜならば、伝えないことで、同業種と喧嘩することも減るであろうし、批判もされず傷つかないからだ。だが、伝えないことで、得るものも無い、相手に与えるものも無くなってしまう。改善・発展のチャンスも、何も生まれないだろう。

 自分やあなたたちが何ものであり、己が提供する仕事が何であり、どんな変化や付加価値をあなたやあなたの未来にもたらすのか、どんな魅力があるのか。「伝えない」とか「なんとなく伝える」のではなく「しっかり伝える」ことを今一度初心に戻って決心し、取り組んでいこうと思う。

☆ミニ情報誌「おーらいプラス」にも掲載。
有限会社カボスメディアワークス 代表取締役  田邉 元裕


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