2008.11.22全県フォーラム 第4分科会その4
<黒松> ふたりの関係についての質問です「長男が社長で次男が経理部長という関係を維持できますか?」
<哲哉> 出来ます。会社へ入る前も入ってからも、僕ら兄弟喧嘩ってした覚えがないんです。お互いの意見のぶつかり合いはありますが。取引先でも兄弟でやっていてうまく行かない、という話はよく聞きます。でもシンコーラミに関してはハッキリいいます。大丈夫です。さきほど弟が「私の背中を見てきた」と、確かにそう云う所はあります。弟が経理的な真面目な性格になったのは、私を反面教師にしたからだと思います。社長は僕のやることに文句をつけたことがありません。多少世間に迷惑掛けても、殴られたことはありませんでした。でも一度だけボコボコにされたことがあります。それはやったことに対してではなく、叱っている母に対する言動からでした。弟は一度も父に殴られていないんです。
<直哉> 僕もそう思います、お互いの立場を尊重しています。それぞれが自分の活躍の場を見つけ出し、お互いの立場を理解した上で話し合うんですが、方向性は一緒なんです。先ほどの社長の話、兄が母に「水!」と言った件ですが、その後僕に「水!」と言っていたと思います。僕は兄にとって絶対的子分で女房役でした。ストレスもありますが、お互いぶつかり合っていますから弊害にはなっていません。
<黒松> ハイ分りました。まだ社長のお父さんが93で健在ですから、急に社長がいなくなったという経験はありませんが、現社長がいなくなったときの心の準備は出来ていますか?
<哲哉> 同友会の仲間達に「哲哉、お前達はいいよ。見本になる社長が健在で元気だから」と言われます。事業継承の準備もなく、急に先代が亡くなられて、苦労した話はよく聞きます。うちの社長は中長期的ビジョンは作りますが、実務はほとんどこなしていません。同友会や商工会議所等の用事で出かけて「社長元気で留守がいい」というのが現状で、今はどんな事が問題になるのかわかりません。
<黒松> 社長が亡くなって影響がなくなった後の会社のイメージをどう考えますか?今のうちから二人がどういう会社を作っていくのか、という質問じゃないかと思いますけど。
<信幸> 実務における影響はありません。先ほど話したように長男に労務管理・営業等を渡して、今年一年出張に出ていません。経理も次男に渡して、最後の砦だった信金も渡しつつあります。今、今回の設備投資の返済計画を立てています。それを終えると、私がいなくなっても精神的なものしか影響及ぼさないでしょう。
<黒松> ハイ、それを聞きたかったものですから。最後になりますが、社長は60で辞めるということを公言してますが、その後何するの?という質問に答えてください。
<信幸> 労務士やります。先ほど言いましたように、300件から受託事業所を持つ社会保険労務士事務所があります。何か起きればもちろん飛んでいきますが、労務士不在の状態が多かったんですが、引退後は事務所の建て直しを行います。娘が労務士事務所で頑張っていますが、子育てに忙しくて未だ労務士資格が取れていません。あと10年頑張って、その間に娘に資格を取ってもらおうと思っています。それで私の事業継承は全て完了します。会社を引退した後も、私は忙しくしていると思います。
<黒松> 質問事項は以上です。最後に、河原崎社長、二人の息子さん方、感想とまだ言い足りないことがございましたら話していただきたいと思います
<信幸> 本当に今日は感謝の気持ちでいっぱいです。あと1年ちょっとで引き継ぐというタイミングでこういう場所を与えていただいて、三人雁首並べて黒松のコーディネイトで言いたいことがいえた。私今日は熱くなって語らせていただきました、聞き苦しいことも沢山あったと思います。でも私の考えと生き様を全部さらすことが出来たと思います。今日は女房にも「出て来い」と言って、聞かせることができました。本当にありがとうございました。
<哲哉> 今日は本当に有難うございました。こういう席で発表するということは、皆さんの前で宣言したということです。事業継承も一年と少しです。「その後こうなりました」とまた報告できたらいいなと思っています。頑張りますので皆さんよろしくお願いします。
<直哉> この話がきたとき、最初家族で話し合いをしました。全くまとまらなかったですね。本番はどうなるんだろうと心配しましたが、三人ではなかなか話せないようなことまで言って、聞けて、こんな経験をさせてもらえて有難いと感謝しています。またバズにも入らせていただいて、皆さんの色々な話が聞けて勉強になりました。今日は本当にありがとうございました。
<黒松> ハイ、ありがとうございました。3人のパネリストにもう一度拍手をお願いします。最後にコーディネーターの講評ですけど、河原崎社長がほとんどまとめてくれたんじゃないかなと思います。一番学んだことは、継がせる・継がせられる・継がせてみたい会社を創る、その親父の生き様を子供が引き継ぐ。それが原点ではないかと。労使見解の中に「経営者の責任」を強く訴えています。なぜ経営責任なのかというところに同友会の真髄があると思います。事業継承も経営者の大きな責任です。責任を持って承継させる、これが今日の議題だったと思います。
制度的な問題においては中小企業に追い風が吹いています。事業継承における税制も成立すると思います。中小企業に対する見方が確実に変わってきていると思います。それは中小企業憲章や振興条例等の原動力になっていると思います。中小企業は大企業の補完ではない、労働力の70%以上を雇用する力が中小企業にある。それを私たち自身が実感する必要がある。
そして今日の一番のポイントは、この厳しい経営環境の中、シンコーラミは未来に羽ばたくと言っていますが、一番厳しいときに親子で経営課題・経営方針を共に考えながら継承していく、これが一番大切なことだと私は考えています。
最後に皆さんのバズのテーマにはならなかったようですが、河原崎社長の話のように、富士宮支部では仲間の子供たちも一緒に育ててきました。今日私が哲哉・直哉と呼び捨ていることに違和感を抱いたかもしれませんが、仲間の子供たちとまるで自分の子供のように接してきたんです。同友会は地域に責任を持て、と云いますが、地域の中で責任を持つには長いスパンを必要とします。河原崎社長は富士宮商工会議所の副会頭を務めています。同友会の仲間たちは文化活動や街づくりなど、地域や行政にあてにされる活動を行っています。それが同友会の理念・方針・生き方と企業の発展と渾然一体となって考え行動することが「同友会的な生き方」であると定義したいと思います。
今日の三人の真摯な討論を通じて、同友会の素晴らしさ、同友会的に生きていくことの意義を感じることができたのではないでしょうか。総括にはなっていないかもしれませんが、皆さんの協力によって討論を掘り下げることが出来たのではないかと思います。今日は本当にありがとうございました。