第51回中同協定時総会 記念講演 (株)吉村 橋本久美子氏
第51回中同協定時総会最後を飾る記念講演。報告者は、(株)吉村 橋本久美子代表取締役社長。東京同友会の女性部部長でもあります。
タイトルは「同友会は経営者の宝島 ~おせっかいな仲間達と、出会い、学び、実践する。失敗しながら、変わる~」です。
冒頭、橋本氏のポリシーでもある「見える化」ということで、今回の報告の目的と目標設定が行なわれました。また、具体的な数字を入れることで目標到達点が明確化されるとのポリシーで、「2つ」という数字が目標として設定されました。
(株)吉村は茶葉を包装するパッケージの企画・製造・印刷・販売を行なう創業87年目を迎えるメーカーです。パッケージが紙の時代には商社でしたが、昭和47年にアルミパッケージが開発されると、「流通が川上へ行く」と判断した先代社長が、周囲の大反対を押し切りメーカー化を遂げ、今に至ります。
焼津市に工場があり、定期的に見学会を開催しているので、ご存じの方も多いかと思います。
社員数は、235名(当日現在)。「約」を付けないのが橋本流。社員を一つの集団として見るのでは無く、目の届く範囲の粒々の集合体として見たいとの思いから。もちろん、社員の名前と顔は全員覚えているとのこと。
サラリーマンの主婦として過ごしていた橋本氏は「明日の飯担当」として入社。10年後、売上が52億から45億まで落ち込んだ時に社長就任。「茶業界のビジネスパートナー」を掲げ社長業に邁進するものの、「女性社長のお手並み拝見」と言うことでかなり理不尽な扱いを受けて、業績も一向に上向かない。
そんな苦しい時代に同友会に出会い、入会。学びを自社に持ち帰りすぐに実践するということを繰り返し、次第に業績も上向いて行きます。
「ここで新たな一手を」ということで、新工場建設のために18億円の投資を決意。2011年1月にためしてガッテンに掛川茶が紹介されて、2月に起工式、「さあ、これからだ!」という時に起きた3月の大震災とその後の原発事故。そして、静岡茶からセシウムが検出されて、バッタリとお茶が売れなくなる。当然、包装の仕事も激減。
経費を詰める中で、労使見解と経営理念を学び直し、理念から「お茶」を外すことで、新しい道のりを歩み出し、今までの常識にとらわれない発想での商品を次々と開発。
そんな中、日本茶を脇役として引っ張り出せるお菓子「割れチョコ」が、ギフトショーで表彰される。これに注目した大企業が商談に来るものの、元々のコンセプトが日本茶を売るためのお菓子、量販店向けに大ロットで売るわけにはいかないということで、経営理念を携え丁重にお断りしたとのこと。
猫のポチ袋からヒントを得たキャラクターが、みたらしちゃん。尻尾がみたらし団子のようになっていることからの命名なのですが、このキャラクターをあろうことか、コーヒー会社から使いたいとのオファーが。
割れチョコ同様、みたらしちゃんも日本茶を飲んでもらうための仕掛けですから、ライバルとなるコーヒー会社には当然渡すわけには行かない。
「そんなオファーが来るのは、みたらしちゃんが理念を持っていないからだ」ということで、その後、みたらしちゃんの経営理念が作られ、そんなオファーも無くなったとのことです。
また、橋本社長は、様々なアイディアで「見える化」「共有化」を図っています。その中で、クレームに対しては事件化させて興味の湧く紹介をすることで、再発防止を図っています。
ちなみに、「そのまんまホーチミン事件」とは、クレームを放置したがために問題が大きくなって解決が難しくなったという案件です。
他にもここでは書き切れないぐらいの工夫とアイディアを沢山紹介頂きました。そんな工夫やアイディアを考えることも素晴らしいのですが、それらを実践し、その経験を積み重ねてきたことこそ、何よりも大切なことではないかと思う記念講演でした。