富士宮市中小企業大学 第五講 揺れる大地の物語
日時 平成23年11月8日(火)19時
講師 静岡大学理学部助教 生田領野氏
講義 揺れる大地の物語
始めに、現在の陸地が形成されたプレートテクトニクスの解説が行われた。1915年にドイツのウェゲナー氏が「一つの大陸だった世界中の陸地が、およそ2億年前に分かれて移動した」という大陸移動説を唱えた。海岸線の形状・動植物の化石・岩石の種類等、一つの大陸から分かれたことは推察できるが、大陸移動の原動力は?という疑問が残った。1960年代、海底の探査によって、海嶺という巨大な海底山脈が発見され、海底掘削によって、海嶺に近づくほど堆積物が若くなることなどから、海洋底拡大により大陸が移動したことが解かった。海嶺のズレを調査すると、現在も間違いなく新しいプレートができ続けていることが証明される。地球内部の熱対流により、表面に出たスラブが冷やされ、密度が高まり、重くなって沈むことがプレート移動の原動力となっている。
日本の成り立ちは、2500年前からプレートが沈み込む収束帯で、背弧拡大により日本海が開き始め、日本海の拡大と共に、フィリピン海プレート上の火山列の衝突による陸地の隆起でできた。プレート収束帯に存在する日本は火山が多く、地震においては年間10万回を数える。
日本周辺で起こる地震は、海のプレートが陸のプレートに沈み込む時のストレスの開放時に、陸のプレート内で起きる深度の浅い地震、海のプレート内で起きる深度の深い地震、プレート間で起きる地震がある。地震が発するエネルギーの大きさはマグニチュードで表されるが、東北地方太平洋沖地震では破壊規模の大きさから表しきれず、モーメントマグニチュード9と発表された。地殻変動は、水平移動で最大5メートル、沈降は最大で80センチメートル、400㎞の範囲で破壊された。
海溝型地震では急に起きたり起こらなくなったりしない、過去に起こった場所では特定の時間間隔・規模で必ず起きる。プレートの沈み込みは1年で50㎝、地震を起こす場所(アスペリティ)は予め決まっており、地震時以外は強く固着している。今回の地震は連動型で、これまで知られていたアスペリティを複数個含み、滑りきっていると思われたアスペリティもそれを超えて滑った。結果、予想されたM7クラスの、面積で10倍、すべり量で数十倍という、300年分に相当する大規模地震となった。海溝型地震の津波発生のメカニズムは、アスペリティの固着が剥がれるときに、固着部で隆起、陸側で沈降する。これにより、大きな引き波に続いて津波が襲ってくる。
東海地方の地震は、東海・東南海・南海があるが、東南海・南海地震はともに90~150年周期で起きているが(66年前の昭和地震が最後)、東海では150年の空白がある。過去にも単独型はなく、おそらく次も連動型になると予想される。震央は南海・東南海と予想されるため、東海に至るまでに地震波が重なり、さらに内陸型となるので(静岡市の直下10㎞にプレート境界)、斜面崩壊・住宅の倒壊による被害が多いと予想される。
最後の質疑応答で、「どこに住んだら安全でしょう」という問いに、「日本に絶対安全なところはないでしょう」、先生の答えが耳に残った。