平成24年度 富士宮市中小企業大学 第三講
平成24年度 富士宮市中小企業大学 第三講
日 時 平成24年10月9日 午後7時
講義内容 日本は幸福な国になれるか -若者の状況を読み解く-
講 師 静岡大学 人文社会科学部 教授 荻野達史氏
2011年11月、ブータン国王夫妻が来日してから「幸福度」への関心が深まった。ブータンでは国民の97%が幸福だと答えているが、日本では51%が幸福だと答えている。ブータンでは30年前から国づくりの指針で国民総幸福度の測定を行い、項目には基本的な生活に加えて、健康・教育・環境・伝統文化・地域活力・精神的・ガバナンス・ワークライフバランス等を測定している。
世界の主流は幸福度を、経済学の観点からGDPを指標としてきたが、1990年頃から生産の平均値より所得や消費・分配を注視し、主観的幸福を計測するようになった。総じて「暮らしの質」を測定し、環境・経済に関する持続可能性を評価するよう変わって行った。日本でも2011年内閣府に「幸福度に関する研究会」が発足し、主観的幸福度の測定を始めた。
幸福度には様々な個人的条件があり、性別・年齢・学歴・職業・所得・趣向品等、個人的諸条件を変数として検討する。年齢による幸福度は、世界的に若年と老年で高く、おおむねU字型となる。年齢・時代・世代効果が加わるので、同じ質問項目で反復横断調査が必要である。個人所得ではある水準までは幸福度が上昇するが、700万を超えると鈍り逆に降下する。様々な条件で相対的効果の測定を行う。
日本の未来を考える為に、若年層の幸福感について検討しましょう。日本の若者の生活満足度は、1976年には20%以下だったが、毎年上昇し2008年では60%を超え45%も上昇している。しかし雇用状況でみると、失業率は上昇し非正規雇用率も上昇するなど厳しい状況にある。
これを反映して、社会への不満や将来への不安は、国際的に比較しても非常に高い。社会・将来は不満だが幸福度は高い、この若者の意識状況は、今がよければいいという「現在志向」と小さな世界で戯れる「仲間充足」このような状況が読み解ける。友人関係への満足度、友人・仲間の重要性の高さが統計にも表れている。
若者の将来への不安や社会への不満・展望の暗さが顕著ななか、これで「幸福な国」が形成されるのか。若者が、より広い社会圏に信頼を高めることができる政治経済システムの構築、社会形成への協働を促す枠組みを作る。これらが「幸福な国」を作るため考えていくべき問題と提案する。
★報告:河原崎信幸(シンコーラミ工業株式会社)