富士宮

クレド

 私の趣味は『シティホテルめぐり』と公言してはばからないほど、ある意味マニアなのである。仕事柄出張が多い為、各地のシティホテルに宿泊し、シティホテルごとの特色を発見することが私の息抜きの一つになっている。

 マニアになるキッカケは、出張先での体調不良。

 8年前、東京にて体調を崩したのだが、客先との打合せを休むわけにも行かず、妻の勧めもあり、あるシティホテルに緊急宿泊した。その時のフロントマンが私の体調不良に気付き、ホテルドクターを呼んで応急処置をしてもらったことが始まりだった。そのときのフロントマンの応対、その後のサービスなどなど。弱っていた私は大層感謝したことを覚えている。寝るためならビジネスホテルで十分と思っていたが、この出来事から考え方が少し変わった。

 出張先で静かに仕事が出来る場所を提供し、緊急対応が必要な案件にも即座に対応できるサービスを当たり前のように提供をしてくれる。言い方を変えれば、シティホテルは高いレベルのサービスを販売しているのだ。それに気付きシティホテルが提供してくれたサービスを思い返すと、各々のサービスに感動したのを今でも忘れられない。

 提供されるサービスの受け止め方、感じ方、考え方は人それぞれであるから一概には申し上げられない。ただ、私個人はサービスに感動した。それにより公私共に全国各地出かける際にはホテル宿泊するだけでなく、過ごし方を楽しむようになってきた。冒頭のホテルマニア誕生である。

 そんな私の印象に残ったシティホテルが「ザ・リッツ・カールトン大阪」である。当初、素晴らしいサービスでホテル内での滞在を充実したものにしてくれたのだが、私は、単に社員教育が徹底している程度にしか感じていなかった。その数々のサービスが"クレド"の実践によるものだと知ったのはしばらく経ってからだった。

 では、クレドとはなにか?一般的にクレドとは「信条」を意味するラテン語で、「企業の信条や行動指針を簡潔に記したもの」を指している。多くの企業では、この仕組みを従業員の自主的な行動を促すためのツールとして利用しているという。

 前述のザ・リッツ・カールトン大阪では『ゴールドスタンダード』と題するクレドを経営の中核に据えている。内容は1200文字程度の文章にすぎない。従業員はこれを記した名刺大カード(8面4つ折り)を常に携行し、日常業務の中でこれを参照しているとのことだった。『ゴールドスタンダード』が定めているのは6項目の指針。この6項目の指針についての詳細は今回省略するが、クレドを従業員に明文化し、常に携行させ、従業員が行動に困ったときには、携行しているクレド読み、考え、そしてクレドに沿った行動を起こす。

 なるほど、クレドによる同一ベクトルを向いた個々の能力の集合体がザ・リッツ・カールトン大阪を一流ホテルと言わしめる秘訣ではないのか。その一部を垣間見た気がした。ホスピタリティサービスの根幹はクレドにあるのだ。私は来阪する度に、時間が許せばザ・リッツ・カールトン大阪に立ち寄る。クレドを実践しているサービスを感じる為に。

 では自社はどうなのだろうか。経営理念の策定を含めまだまだ不足の所があり過ぎる。 シティホテルでの一流のサービスを享受するだけでは何事も進歩がない。それを自社に取り入れ実践しなければ何も変わらない。判っていて実践出来ていない自分が、ただただ恥ずかしい限りである。

平成21年4月10日

有限会社朝霧牧場  簑 威頼


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